暮らし

唐川びとへ 〜精霊たちの庭 出雲・唐川

和が濃い、唐川
神話と風土記の国、島根県出雲市の山あいの集落・唐川。
山上の巨大な岩倉に見守られるような、茶畑の広がるあたたかな風景。
そこに和やかに慎ましやかに、ときに晴れやかに暮らしをたてる人びと──。
百七十点余のカラー写真と折々の文章で綴るドキュメント。
唐川は戸数五十四、人口百七十九のちいさな集落。
島根半島の西端、出雲北山の山間に、大部分が荒木姓の人びとが暮らしています。
八世紀に著された『出雲国風土記』に記されている韓竈神社の氏子たちです。
二十五年に一度の遷宮に出会って以来、その唐川びとに魅せられた著者が、
二〇〇八年まで十年にわたって記録してきた写文集です。
春の新茶摘みと新茶まつりの賑わい、韓竈神社に集う人びと、
大祭の獅子舞や神楽の熱気、荒神さまや山神さまへの親しみ深い祈り、
紙漉きをする人、その材料であるみつまた刈りに精出す人……。
どのページからも、唐川びとの地道で確かな日々の表情が、
生き生きと立ち上ってきます。
自然の精霊たちとの交感にあふれた、ほのぼのと心温もる一冊です。
神話と風土記の国、島根県出雲市の山あいの集落・唐川。
山上の巨大な岩倉に見守られるような、茶畑の広がるあたたかな風景。
そこに和やかに慎ましやかに、ときに晴れやかに暮らしをたてる人びと──。
百七十点余のカラー写真と折々の文章で綴るドキュメント。
唐川は戸数五十四、人口百七十九のちいさな集落。
島根半島の西端、出雲北山の山間に、大部分が荒木姓の人びとが暮らしています。
八世紀に著された『出雲国風土記』に記されている韓竈神社の氏子たちです。
二十五年に一度の遷宮に出会って以来、その唐川びとに魅せられた著者が、
二〇〇八年まで十年にわたって記録してきた写文集です。
春の新茶摘みと新茶まつりの賑わい、韓竈神社に集う人びと、
大祭の獅子舞や神楽の熱気、荒神さまや山神さまへの親しみ深い祈り、
紙漉きをする人、その材料であるみつまた刈りに精出す人……。
どのページからも、唐川びとの地道で確かな日々の表情が、
生き生きと立ち上ってきます。
自然の精霊たちとの交感にあふれた、ほのぼのと心温もる一冊です。

唐川へ
茶工場のお茶の時間
うぐいすとうたう
獅子が鼻のおはよう!
百年のはしご
唐川と鰐淵寺
運動会日和
夏と秋との会い別れ
どこともなく体が…
五十五年目の頭家〔ほか〕
茶工場のお茶の時間
うぐいすとうたう
獅子が鼻のおはよう!
百年のはしご
唐川と鰐淵寺
運動会日和
夏と秋との会い別れ
どこともなく体が…
五十五年目の頭家〔ほか〕
白谷達也 しらたにたつや
1945年、福岡県生まれ。写真家。
朝日新聞出版写真部在籍中「アサヒグラフ」「朝日ジャーナル」「週刊朝日」などの雑誌を舞台に幅広い取材を展開した。
共著書に『セラミックロード』『国会議事堂』などがある。
古澤陽子 ふるさわ ようこ
1950年、神奈川県生まれ。記者・編集者。
「アサヒグラフ」編集部在籍中に「小泉八雲の出雲」「出雲国風土記への旅」「銅鐸の谷―加茂岩倉遺跡と出雲」「出雲―神々の季節」などを企画・取材。
学生時代に入沢康夫『わが出雲・わが鎮魂』に触発され、以来、出雲をたびたび訪ねている。
(本書より)
1945年、福岡県生まれ。写真家。
朝日新聞出版写真部在籍中「アサヒグラフ」「朝日ジャーナル」「週刊朝日」などの雑誌を舞台に幅広い取材を展開した。
共著書に『セラミックロード』『国会議事堂』などがある。
古澤陽子 ふるさわ ようこ
1950年、神奈川県生まれ。記者・編集者。
「アサヒグラフ」編集部在籍中に「小泉八雲の出雲」「出雲国風土記への旅」「銅鐸の谷―加茂岩倉遺跡と出雲」「出雲―神々の季節」などを企画・取材。
学生時代に入沢康夫『わが出雲・わが鎮魂』に触発され、以来、出雲をたびたび訪ねている。
(本書より)

★★★★★
静かな山あいの村のひとときを…
2013/02/18

NHK・BSの番組「新日本風土記」は、たとえば、古代さながらの木曽の神楽舞や杣人が樹木を伐採する前後の山ノ神への祈りといった風俗を美しい映像詩で紹介する番組ですが、朝崎郁恵のテーマ曲「あはがり」を聞いているだけで、胸がしんとして、静かな気持ちになっていきます。私のようなテレビ番組制作の実態を知らない者にも、「新日本風土記」が相当の時間をかけて、丁寧に制作されていることが容易に想像されます。
この『唐川びとへ』は、島根県出雲市の山あいの村落の四季をカラー写真と言葉で綴ったもので、あたかも「新日本風土記」を一冊の本で再現したような内容になっています。写真の最初の一枚は、25年に一度の神社の遷宮のために、白装束の神主を先頭にして、幟を立て、横笛を吹き、太鼓を叩きながら、緑豊かな茶畑の中の一本道を行列する村びとの写真ですが、かすかなお囃子の音が伝わってくるようで、たちまちこの本の中の<唐川びと>の佇まいに惹き込まれていきます。全部で54戸、そのうち52戸が荒木姓、2戸が錦織姓という小さな村で、その時々、村びとが集う新茶まつり、荒神祭、自治会の運動会、秋の大祭…、という行事がトピックとして採り上げられ、どれも取りたてて稀しいわけではないけれど、私の体験したことのない平穏な時間が流れていくさまがうかがえます。
昔の民俗学の本を読むと、挿入された写真が不鮮明なモノクロで、その情景がなかなか想像できませんでしたが、いまはこうやって、『唐川びとへ』一冊で静かな山あいの村のひとときを知ることができ、読後の印象はといえば、小さな幸せをお裾分けしていただいたようないい気分です。
この『唐川びとへ』は、島根県出雲市の山あいの村落の四季をカラー写真と言葉で綴ったもので、あたかも「新日本風土記」を一冊の本で再現したような内容になっています。写真の最初の一枚は、25年に一度の神社の遷宮のために、白装束の神主を先頭にして、幟を立て、横笛を吹き、太鼓を叩きながら、緑豊かな茶畑の中の一本道を行列する村びとの写真ですが、かすかなお囃子の音が伝わってくるようで、たちまちこの本の中の<唐川びと>の佇まいに惹き込まれていきます。全部で54戸、そのうち52戸が荒木姓、2戸が錦織姓という小さな村で、その時々、村びとが集う新茶まつり、荒神祭、自治会の運動会、秋の大祭…、という行事がトピックとして採り上げられ、どれも取りたてて稀しいわけではないけれど、私の体験したことのない平穏な時間が流れていくさまがうかがえます。
昔の民俗学の本を読むと、挿入された写真が不鮮明なモノクロで、その情景がなかなか想像できませんでしたが、いまはこうやって、『唐川びとへ』一冊で静かな山あいの村のひとときを知ることができ、読後の印象はといえば、小さな幸せをお裾分けしていただいたようないい気分です。